借金を返済せずに踏み倒したままでいると、ブラックリスト(信用情報)に延滞情報が載り続けます。
ブラックリストに載ると、以下のような契約をする際にほぼ100%審査に落ちるでしょう。
- 住宅ローン契約
- 各種ローン(車・エステ・高額商品など)
- 携帯電話端末の分割購入
- クレジットカード契約
- カードローン
しかしあなたの借金がすでに時効なら、合法的にブラックリストから延滞情報を消すことができます。
延滞情報を消す方法は、債権者(貸主)に「私のこの借金は時効が完成したので、私には返済する意思がありません」と宣言する消滅時効の援用を行うこと。
時効の援用をすれば、借金の返済義務がなくなりブラックリストから事故情報を消すこともできるので、時効を過ぎた借金を放置している方はぜひ実行してみてください。
今回は時効を援用してブラックリストから借金の事故情報を消す方法をご紹介します。
延滞中の借金の情報はブラックリストからいつまでも消えない
カードローンや住宅ローン、クレジットカードなどを利用すると、信用情報機関に契約者の情報が記録されます。
返済状況も記録されており、借金を長期間滞納すると、事故情報として長期間記録が残ってしまうのです。
全ての情報には保有期間が定められているのですが、借金を踏み倒したままにしておくと延滞中ずっと事故情報が載ったままになります。
ブラックリストに掲載される情報は4種類ある
事故情報は「延滞・遅延」「債務整理」「代位弁済」「強制解約」の4つに分類されます。
- 延滞・遅延
約定返済日から期間を過ぎても返済されていない。
返済日より61日以上または3ヶ月以上の支払いの遅れ。 - 債務整理
任意整理・個人再生・自己破産・特定調停など、借金の返済が不能に陥った場合と過払い請求をした場合。
- 代位弁済
本人が返済不能に陥いった際に、保証契約に基づいて代わりに保証会社や連帯保証人から返済を受けた場合。
- 強制解約
本人の返済能力が認められず、信用が毀損しカードの解約を受けた場合。
消費者金融やカード会社等から、これらの情報が信用情報機関に提供されると、信用情報開示報告書の返済状況欄に異動と表示されることになります。
この状況をいわゆるブラックリストと呼んでいるわけです。
事故情報が消えるのはいつ?ブラックリストの保有期間
日本には「CIC」「JICC」「KSC」の3つの信用情報機関があります。
どの信用情報機関に登録しているかは金融機関によって異なりますが、だいたい業種ごとで加盟する信用情報機関が決まっているようです。
そしてブラックリストはどの信用情報機関も契約中および契約後5年間保有され、借金の延滞・遅延に関しては返済されない限りずっと情報が記載されたままになってしまいます(CICの場合は延滞解消日から1年)。
各信用情報機関の、事故情報の保有期間をまとめたので参考にしてください。
信用情報機関 | 加盟店業種 | 事故情報の保有期間 |
---|---|---|
CIC |
|
契約期間中及び契約終了後5年間記載 ※延滞中はずっと掲載 記載内容は支払状況に関する情報(報告日・残債額・請求額・入金額・入金履歴)や異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日、終了状況など |
JICC |
|
契約期間中及び契約終了後5年間記載 ※延滞中はずっと掲載 記載内容は支払状況に関する情報(報告日・残債額・請求額・入金額・入金履歴)や異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日、終了状況など |
全銀協 (KSC) |
日本にある全ての金融機関 |
|
ちなみに、それぞれの情報機関はお互いの保有情報を共有しています。
つまり、CICに掲載された事故情報はJICCやKSCに登録している金融機関も閲覧することができるということ。
ひとつでもブラックリストが記載されていたら、どんなローンの審査にも影響するということですね。
クレカやスマホの端末代も延滞中はブラックリストから消えない
信用情報機関にはカードローン会社や銀行だけでなく、クレジットカード会社や携帯電話事業者も加盟しています。
つまり金融機関からお金を借りていなくても、スマートフォンの月々の料金を滞納したり、クレジットカードの引き落としが滞ってしまったら、信用情報機関に記録されてしまうということです。
そしてこれらも借金の延滞と同様に、延滞中はブラックリストから消えません。
問題はこの事実を知らない人が多いこと。
「自分はどこからもお金を借りていないから大丈夫」と思っていると、思わぬタイミングでクレカやスマホ代金の滞納が影響することもあります。
クレジットカードの滞納が、後のローン契約に影響した例をご紹介しましょう。
信用情報機関に情報開示したところ、何十年も前にクレジットカードの強制解約を受け、返済できていない借金があった。
すぐに返済したが、「延滞解消」情報が1年保有され住宅購入を見送ることになった。
過去に滞納をしたことがある人や、滞納によって強制解約されたことがある人は、一度信用情報を確かめてみてください。
まだ事故情報が記載されたままになっているかもしれませんよ。
借金の長期滞納情報をブラックリストから消すには「時効の援用」をする
借金を滞納している限り、ブラックリストを消すことはできません。
「だいぶ前の借金をずっと滞納している…すぐに全額返済はできない」という方もいるでしょう。
そんな方は、まず信用情報機関に情報開示請求をしてみましょう。
もし信用情報に「異動」と記載があり、その借金がかなり以前のものであればブラックリストから消すことができるかもしれません。
借金の滞納期間が5年を超えているという方は、時効の援用ができる可能性が高いので、これから紹介する時効援用の方法を実践してみてください。
時効の援用とは時効制度を利用するという意思表示をすること
借金には時効があります。
借金の内容によって異なりますが、最終返済日から数えて5年経過していれば時効となることが多いです(時効期間が10年というものもあるので、必ず確認してください)。
ただ、時効の日を迎えたからといって、自動的に借金の返済義務がなくなるわけではありません。
「借金が時効になったので、もう返済はしません」とお金を貸してくれた業者に意思表示することで、返済義務がなくなるのです。
そして、このように意思表示することを時効の援用と言います。
時効の援用については、こちらの記事でより詳しく解説しているので参考にしてください。
借金の時効援用の方法!時効成立条件と通知方法・消滅時効の援用費用を解説
時効の援用でブラックリストから借金の延滞情報を消す方法
時効の援用をする方法は、債権者に時効援用通知書を送付するだけです。
時効援用通知書が債権者に届いた時点で、借金の返済義務がなくなります(時効援用通知書を送れば、だれでも時効が援用できるわけではありません。時効援用をするには条件があります。)。
時効援用通知書を作成するときに気をつけておきたい点がひとつあります。
それは、時効援用通知書に、信用情報機関に記載された延滞情報を消す手続きをお願いする旨を書いておくことです。
時効通知書のサンプルを掲載するので、参考にしてください。
平成30年〇月〇日
東京都〇〇区〇〇 〇〇ビル〇〇〇号室
〇〇消費者金融株式会社 代表者代表取締役 〇〇〇〇殿
神奈川県〇〇市〇〇 〇〇〇〇 印
電話番号〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
FAX番号〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
前略 貴社は私に対し、以下に記載する内容の貸金の返還請求をしておられますが、私が貴社より借り受けた当該債務については、最終弁済日の翌日(平成〇〇年〇月〇日)からすでに5年以上が経過しており、時効が完成しております。
契約番号:〇〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
借入人氏名:〇〇〇〇(ふりがな)
生年月日:昭和〇〇年〇月〇日
住所:神奈川県〇〇市〇〇
当初借入額:〇〇万円
つきましては、私は貴社に対し、本通知書をもって上記貸金債権について、消滅時効を援用しますので、その旨ご通知いたします。
貴社におかれましては、本書面を受領後速やかに信用情報機関宛てに適切な通知をして、登録された事故情報を抹消されますよう、併せてお願い申し上げます。
赤字のように書いておくと、ほとんどの場合が対応してくれブラックリストから事故情報が消えるはずです。
この一文がない場合、債権者によっては債務の認識の違いから情報更新しないこともあるようですので、ブラックリストからの削除が目的の時効援用では特に重要です。
時効の援用によって法的に支払い義務はなくなったが、債務自体は自然債務(裁判所などに訴えて強制的に回収することのできない債務)として残っているという考え方。この考え方によって延滞情報を消してくれない債権者がおり、過去に裁判になった例も存在します。
時効援用後にブラックリストから消えるタイミングはいつ?
債権者が時効援用通知を受け取った時点で、すぐにブラックリストから事故情報が消えるのでしょうか?
答えは NO です。
以下の表は時効援用後に、事故情報がどのように変更され、いつブラックリストから完全に消えるのかを信用情報機関別に表したものです。
CIC | |
---|---|
変更内容 | 契約終了または貸倒れと表示される。 ※債権者によって、(回収不能債権として)「契約終了」とするのか「貸倒れ」とするのか登録する名目は異なる。 ※貸倒れとは貸付金などの債権が、倒産などの理由で回収できず損失となること。またはその損失の金額をいう。 返済状況は異動情報のまま残る。 |
消えるタイミング | 契約終了時(または貸倒れ)に消える。 ただし異動情報は残ったままで、時効援用から5年経てばブラックリストから消える。 |
JICC | |
---|---|
変更内容 | 債権者から情報提供され、異動情報が消える。 時効援用後1年間は「延滞解消」、その後4年間は「完済」、5年経過するとファイルごと削除される。 |
消えるタイミング | 貸金業法に基づく個人信用情報は、情報に変更があった時から翌日までに情報更新を行っている。 ※クレジットカードについては、原則月1回の情報更新だが、加盟会員によってタイミングは異なる。 情報が消えるのは5年後だが、延滞があったことを示す情報は1年で消える。 |
KSC | |
---|---|
変更内容 | 債権者からの情報提供により、延滞解消と記載される。 |
消えるタイミング | 時効援用後、5年間「延滞解消」と記載。 完了区分は「完了」となるので、時効援用なのか一括弁済なのかは信用情報からは分からない。 時効援用後、5年経てばブラックリストから消える。 ※5年間は過去に延滞があったことが分かる。 |
このように見ると、時効を援用しても最長5年間は各ローン審査に落ちる可能性があります。
しかし、時効を援用しないと審査を要する契約が一生できないかもしれません。
どちらがメリットが大きいかは、考えるまでもないのではないでしょうか。
債権回収業者から督促された借金をブラックリストから消す方法
債権者に時効通知書を送付すれば、時効の援用ができると紹介しました。
ただし、債権回収業者(サービサー)から督促状が届いている場合は要注意です。
債権回収業者は借金の回収を専門に行う業者で、元の貸主(原債権者)から債権を譲渡されて債務者に債権の請求をします。
最近ではニセの債権回収業者による債権回収詐欺が横行しているようですが、債権回収業者から督促状が届く前に元の貸主から「債権譲渡通知」が届いていれば、本物の督促状であると判断してよいでしょう。
もちろん債権回収業者から督促状が届いていても時効の援用ができるのですが、債権回収業者が相手だと、借金の承認をとられ、時効の援用ができなくなる可能性があります。
さらに、債権回収業者はどの信用情報機関にも加盟していないため、債権回収業者に事故情報削除の依頼をしても意味がないのです。
債権回収業者ら督促状が届いている場合は、自分の判断で債権回収業者に連絡をせず、弁護士や司法書士に相談することをオススメします。
借金の返済意思があることを債権者に示すこと。借金の承認行為をすると、時効援用の権利を喪失してしまうので要注意。
むやみに債権回収業者に連絡してはいけない
債権回収業者は、文字通り債権(借金)の回収を専門とするプロです。
下は債権回収業者から届く書類のタイトルの一部です。
- 催告書
- 訪問予告通知
- 和解提案のご案内
- ご入金のお願い
- ご通知並びに法的請求前のご確認
他にも様々な名目で届きます。
債権回収業者は、法務省管轄で弁護士法の特例として特定金銭債権の管理・回収が認められている業者です(全国サービサー協会について)。
時効期間が過ぎている債権でも、このような通知が届くのは「裁判上の請求」や「借金の承認」を得て、時効期間をリセットさせることができれば債権回収の機会を延長できるからです。
裁判上の請求 | 債権者が裁判所を通して、訴訟や支払督促手続きを行うもの。 これにより裁判所の判決が下ると、借金の時効は判決日から10年に延長され、強制執行(財産差押など)が行われる。 |
---|---|
借金の承認 |
以上の例のように借金の承認を取られれば、その時点で時効期間がリセットされ返済義務が継続します。 |
債権回収業者によっては、すでに裁判所手続きをしている場合もあります。
裁判所から書類が届いたら、2週間以内になんらかの措置を講じなければ、判決をとられてしまい強制執行を受け借金の時効も10年延長されます。
また、「ご連絡ください」「遅延損害金は請求しません。元金のみ返済してください」と記載してあったり、借金の一部金の振込用紙が同封されていることもあるようです。
そういった場合にも自ら行動せず、まずは借金の時効期間が過ぎているか確認する必要があります。
時効期間が過ぎているかの確認は、元の貸主(原債権者)へ取引履歴開示請求を行いますが、すでに債権譲渡済の情報になるので、原債権者が誠実に応えてくれないとも限りません。
確実に時効を援用し、ブラックリストから消すには弁護士・司法書士に依頼することをオススメします。
弁護士・司法書士はブラックリストから消えるまでの手続きを代理で行ってくれる
時効援用と信用情報機関(ブラックリスト)の事故情報を削除するには、以下のことをしなければなりません。
- 元の貸主(原債権者)との取引履歴開示請求
- 時効完成条件の確認(時効期間経過・裁判上の請求の有無・借金の承認の有無)
- 債権時効援用通知の作成・送達
- 時効援用完了の確認(信用情報機関への情報削除依頼も含む)
- 時効援用できない・失敗した場合は裁判所手続き・債務整理等
これらをひとつもミスすることなく手続きを進めるのは、とても大変です。
有料となってしまいますが、法律のプロである弁護士や司法書士に依頼するのがよいでしょう。
弁護士・司法書士に正式に依頼すると、代理権が発生し債権者に受任通知が送られます(行政書士に依頼した場合は書類作成のみ代理可能)。
その時点で、債権者から直接請求を受けることはなくなります。
下表は弁護士・司法書士・行政書士に依頼した場合の、費用相場と代理可能な業務範囲です。
業務範囲 | 弁護士 | 司法書士 | 行政書士 |
---|---|---|---|
内容証明郵便の作成 | ◯ | ◯ | ◯ |
裁判外の代理権 | ◯ ※1社の残元金はいくらでも対応可能 |
◯ ※1社の残元金が140万円以下に限る |
X |
裁判上の代理権 | ◯ ※自己破産・個人再生も代理可能 |
◯ ※簡易裁判所に限る |
X |
裁判所提出書類の作成 | ◯ | ◯ ※自己破産・個人再生は書類作成のみ可能 |
X |
費用相場 | 3万~8万円 ※依頼する内容や弁護士によって金額は様々 |
※1社3万~4万円 ※2社以上だと1社2万~3万 |
1~2万円 |
時効援用にかかる費用は、それほど高額ではありません。
法律のプロにおまかせして、確実に援用を成功させましょう。
【まとめ】借金の時効が過ぎたらブラックリストから情報を消す手続きを
借金を延滞すると、完済しない限りブラックリストに事故情報が載ります。
借金は時効が過ぎても、自然にブラックリストから消えないということも分かりました。
しかし、借金は時効期間が経過していると時効を援用し、ブラックリストから削除することができるのです。
ずいぶん前の借金のせいで、住宅ローン審査に落ちたり、いつまでもクレジットカードを持つことができない、事業のための融資を受けられないという人もいるでしょう。
時効を援用したからと言って即時にブラックリストから事故情報が消える訳ではありませんが、将来のことを考えると時効援用をしておくのが賢い選択です。
ただ時効期間が過ぎている借金でも、債権回収業者(サービサー)からハガキや書類で督促を受け、自ら連絡をし借金の承認をしてしまうと時効期間がリセットされることが危惧されます。
明らかに自分の借金は時効だと考える方は、弁護士・司法書士・行政書士など専門家に相談し、慎重に確実に時効を援用しブラックリストから事故情報を削除してもらいましょう。
時効援用の相談はアヴァンス法務事務所がオススメです。