NHK(日本放送協会)は日本の公共放送で、放送を受信できるテレビを設置している人は「放送法」で、NHKと契約し受信料を支払うよう定めています。
NHKの受信料の支払い義務については、賛否両論ありますよね。
NHKの不祥事が理由で支払いを止めてしまった人や、普段からNHKを見ることはないから受信料は払いたくない人もいるでしょう。
中には5年以上NHKの受信料を滞納している人もいると思います。
5年間ずっと払っていない場合、NHK受信料の滞納額は最大で136,800円。
人によっては20万、30万といった未払い金がある人もいるのでは?
そんな大金払えませんよね。
では「払いたくない」または「払えない」という理由で、NHKの受信料を払わなくていいのでしょうか?
結論から言うと、5年以上前のNHK受信料の滞納分は時効となり、払わなくてもいいかもしれません!
もしNHKから、「受信料について法的措置をとる」といった書類が送られてきても、適切な対応をすれば、逃れることができます。
しかし、そのまま放置しておくと強制執行により、財産を差押えられて強制的に受信料を回収される可能性があるのです。
そこで今回は、NHKの受信料を滞納した際「裁判所から書類が届いたらどうしたらいいのか」「どのようにすれば時効が認められるか」を詳しくご紹介します。
5年以上前のNHK受信料は時効になる!ただし放っておいたら強制執行で回収される
冒頭で、「放送法により、テレビ設置者に対してNHK受信料の支払いが義務付けられている」と紹介しました。
NHK受信料の支払いが義務だとすると、「支払うまで、ずっと請求され続けるのかな…」と思いますよね。
でもじつは、NHKの受信料には時効があります。
消滅時効といって、時効が過ぎると支払い義務を放棄することが可能となるのです。
NHK受信料の場合、平成26年9月5日の最高裁判決で、民法169条に基づき消滅時効が5年と認められました(NHK放送文化研究所より)。
つまり時効が認められたら、現時点から遡って5年間の滞納分は支払わなければなりませんが、5年よりも前に滞納しているNHK受信料については、もう支払わなくてもいいということです。
ただし滞納してから5年が過ぎたからといって、放っておいても支払い義務は勝手になくなりません。
NHKから届いた請求書をそのまま放置しておいても、5年以上前のNHK受信料の時効とはならないのです。
時効にならないどころか、滞納期間・滞納金額に関係なく、NHKから裁判所を通し法的手続きがとられると、全額を強制的に差押えられる可能性があります!
では、まずNHK受信料を払わずに放置していると、どうなってしまうのかを解説していきます。
NHKからの重要なお知らせを放置すると裁判所から支払督促の書類が届く
まずNHKから受信料の請求書が届くということは、あなたはNHKと契約をしているはずです。
つまり、NHKとの契約を解約するまではあなたに支払い義務があるということ。
解約をしないで放置していると、その間ずっと受信料の滞納分が増えていってしまいます。
「今うちにはテレビがない」「普段、NHKは見ない」と主張したところで、契約中なので法的に言い分が認められることはないでしょう。
そして受信料を滞納していると、下のツイートのように、NHKから「重要」と書かれた文書が届くことがあります。
郵便受け破壊されてて草
どうせ元々ボロいし管理会社に直してもらうからいいけど
しかしNHKの者(あるいは配送業者)ダイナミック過ぎひん?
怖くて中身開けてないけど督促状か何か?
でも僕NHK払ってるんやが……母親が滞納でもしたんかな
つーかそしたら住所バレてんのかよ…マジきめぇ pic.twitter.com/Cj1oqWV1KD
— 哀れな仔犬 (@c_ekiben_yout) 2019年1月20日
さらにNHKからのお知らせを無視し続けると、裁判所から支払い命令に関する書類が届くかもしれません。
NHKの場合、受信料滞納者に対し支払督促という法的措置を講じることがあります。
NHKが裁判所に支払督促の申立をすることで、滞納者に「未払いのNHK受信料を支払いなさい」という、支払命令を裁判所が出す手続き。支払命令が出ると、時効の対象である5年以上前の受信料も支払わないといけない。
支払命令が出たのにNHK受信料を払わないと強制執行で回収される
裁判所からNHK受信料を払うよう命令が出たのに、それでも支払わなければ強制執行により給与や銀行口座を差押えられることがあります。
では、支払督促の申立から強制執行に至るまでの流れを見てみましょう。
- NHKが裁判所に支払督促の申立をする
- 利用者宛に裁判所より「支払督促」が書面で届く
- 書面受取後、2週間以内に異議申立をしなければ「仮執行宣言付支払督促」が届く
※異議申立をした場合、民事訴訟になり裁判所による支払い義務の有無が判断される
※仮執行宣言とは、支払督促への異議申立がなかったので、次の手続きに入ることを宣言するためのもの - それでも支払わず異議申立もなければ、強制執行手続きをとられる
※2週間以内に異議申立をすると、訴訟手続に移行し裁判所による支払い義務の有無が決定される - 強制執行の申立を認められると、裁判所は「債権差押命令」を出す
- 給与・銀行口座など差押えられ、強制的に滞納した受信料が回収される
実際、NHKの重要なお知らせを受け取ってから支払い督促、そして強制執行になるまでには、ある程度の時間があると考えられます。
NHKが公表した受信料滞納者に対する法的手続きの状況
NHK受信料を滞納したら、強制執行になる可能性があると紹介しました。
「でも強制執行って、NHK側が滞納者に支払ってもらうために言ってるだけで、本当はなにもされないんじゃないの?」
このように思っている人もいるかもしれませんね。
ですが、強制執行は実際に行われています。
下の表はNHKが公表している「受信料滞納者に対する民事手続きの状況」です。
支払督促申立数 | |
---|---|
解決済(支払済・分割支払中) | 9,167件 ※うち全額支払済(8,269件) |
判決・支払督促が確定(未払い) | 1,014件 |
訴訟中 | 58件 |
手続き中 | 89件 |
総数 | 10,328件 |
異議申立により訴訟になった数 | |
---|---|
和解・裁判所による決定 | 3,208件 |
判決 | 1,141件 |
訴訟中 | 58件 |
総数 | 4,407件 |
強制執行申立件数 | |
---|---|
解決済(本人支払・強制執行で回収) | 562件 ※強制執行実施件数362件(全額回収158件・一部回収204件) |
手続き中 | 749件 |
総数 | 1,311件 |
※平成31年1月発表。過去の資料から平成18年11月からの総数と判断される。
NHKでは平成22年以降に、受信料滞納者への法的手続きを積極的に行っているようです。
「支払督促で出された裁判所からの支払命令を無視したため、強制執行の申立をします」と宣言されている人は、全国で平均して月20~30人にも上ります。
つまり、NHKからの「法的手続きをしますよ」という文書は脅しではないのです。
すでにNHKから受信料未払いに関する書類が届いているという方は、消滅時効の時効援用に詳しい専門家に相談することをオススメします。
滞納したNHK受信料の時効援用のやり方
あまりにも高額になってしまった未払いのNHK受信料。
法的措置により強制回収をされる前に、5年以上前の受信料がチャラになる方法(支払い義務がなくなる方法)があります。
まずはあなたが請求されているNHK受信料は、いつからの分なのか請求書を確認してみましょう。
NHKから何度も「重要なお知らせ」を受け取っている人でも、まだ遅くはありません!
いますぐにでも、NHK受信料の消滅時効の援用という方法をとることをオススメします。
時効である5年が明らかに過ぎていたとしても、未納者が支払い義務を放棄する意思表示を示すことが必要。この意思表示を「消滅時効の援用」と呼ぶ。時効であっても支払うべき料金は払いたいと考える人もいるため、自分で時効を援用しない限り、支払い義務はなくならない。
では、どのように時効を援用するのか解説していきます。
NHK受信料を時効援用するときの「消滅時効援用通知書」の書き方
消滅時効の援用の方法は、「時効になっている受信料の支払い義務を放棄します」という意思表示をNHKに示すだけです。
ただし、以下のやり方では時効を援用したことが証明されないので注意しましょう。
- 電話で伝える
- 自宅に訪問してきたNHKの委託業者に言う
- 普通郵便で手紙を送る
確実に時効援用したことを証明するためには、次のような消滅時効援用通知書を内容証明付郵便で送ることが最も効果的です。
※記載内容に決まりはありません。確実に時効を援用するために必要な情報を例として記載しています。
これらの内容を記載し、内容証明付郵便で出すことで、あなたがNHKに消滅時効援用通知書を送ったことが証明されます。
※内容証明付郵便は郵便局で受け付けてくれます。
これだけで5年以上前のNHK受信料の支払い義務がなくなるのです。
しかし、ここで大切なことは「本当に時効期間5年が経過しているか?」ということです。
人によっては、途中で時効の進行がリセットされ、まだ時効期間が経過していない場合があります。
では、時効の進行がリセットされるとは、どのようなことなのかを次に紹介しましょう。
NHK受信料の時効の進行がリセットされる!?時効の中断事由
NHKに受信料だけに限らず、一定期間が経過すれば時効が成立するというのは、払ってほしい側からすれば不平等に思えます。
しかし、時効が経過すれば無条件に時効が認められるわけでありません。
民法では時効の中断事由(時効の進行をリセットする行為)があれば、それまで進行してきた時効期間がリセットされると定めています。
時効の中断事由は、NHK側にも不払い者側にもあり、どちらか一方にでも時効を中断させる行為があれば時効を援用することはできません。
確実に時効を援用したいなら、次に紹介する事実がなかったかを必ず確認しましょう。
NHK側が裁判所手続きをすれば受信料の時効がリセットされてしまう
時効の進行がリセットされる行為として、以下のことが挙げられます。
- 裁判上の請求
民事訴訟による訴え - 支払督促
NHKから裁判所へ支払督促の申立があった場合 - 和解・調停の申立
訴訟(裁判)になる前に、裁判所を通じ和解(話し合い)を申し入れる行為
NHKの場合、2つ目の支払督促の申し立てをすることが多いようです。
NHKが裁判所手続きをすると、裁判所から滞納者宛にNHK受信料未払いに関する書類が届きます。
この裁判所からの書類をすでに受け取ってしまっている人は、時効がリセットされている可能性が高いです。
また、裁判所からはまだ何も届いていなくても、NHKからの「重要なお知らせ」を無視し続けている人は、もうすぐ裁判所から書類が届くかもしれません。
すでにNHKから「重要なお知らせ」を受け取っている人は、支払督促手続きをされる前に早く時効を援用するべきでしょう。
過去にこれらの法的手続きを受けたことがある人は、その時点で時効の進行がリセットされています。
さらに手続きの結果、裁判所から支払い義務を認める判決が出ている場合、時効はそこから10年間に延長されています。
引っ越しをしていて、裁判所からの書類を受け取っていない人でも、支払命令などの判決を受けているケースもあるようです。
NHKから催告書が届くと時効期間の経過が6ヶ月伸びる
先ほど紹介した、時効の中断事由とは別に、催告というものがあります。
督促が支払いの催促だとすると、催告は支払いの通知であり、督促よりも、より強く支払いを求めているということです。
催告に決められた形式はありませんが、一般的には「催告書」という書面が配達証明で送られてくるようです。
催告書を受け取って6ヶ月以内に、NHKが裁判上の請求・支払督促・和解申立の手続きをすれば、その時点で時効はリセット。
催告書を受け取った後、6ヶ月以内に法的手続きが何もなければ、通常通り5年経過時点で時効が成立します。
ちなみに5年以上前に契約解除したけど未納金がある人の場合は、催告書による時効先延ばしが有効になります。
つまり契約を解除していても、催告により未納分を払わないといけないかもしれないということですので、覚えておきましょう。
NHK受信料の滞納を認める行為をすると時効援用できないことがある
NHK受信料の時効を援用するなら、あなた自身に時効の進行を止めるような行為がなかったかも大切です。
自分で時効の進行を止める行為を、承認行為と呼んでいます。
承認行為に明確な基準はありませんが、「5年間に一度でも、自分の支払い義務を認める行為」があった場合をさします。
承認行為があるとそこで時効がリセットされるため、さらに5年経過しないと時効の援用はできません。
承認行為の具体例をいくつか紹介します。
- 長期滞納中に自宅にNHK(もしくは委託業者)が来て、請求されている受信料の一部を支払った。
- 訪問や電話で請求された際、お金がなくて支払えない等、滞納していることを認める発言があった。
- 自分で時効を援用したが、消滅時効期間の記載ミスで受信料滞納を認めたとみなされた。
もし、NHK受信料の時効を援用したいと考えているなら、承認行為がなかったかも含めて慎重にすすめましょう。
自分でNHKに消滅時効援用通知書を送るのが不安ならプロに依頼
ここまでで、5年以上前のNHK受信料は時効を援用することにより、支払わなくて済むことがわかりました。
しかし、本当に時効期間が経過しているかどうかは、時効の中断事由があったかなかったかを確認しないと分かりません。
- 長期滞納していて未払いの受信料が高額で、いつ支払督促を受けるか不安
- 自分で時効の援用をしたいが承認行為があったが分からない
- 契約日が分からず消滅時効期間が曖昧
- いつからいつまでの滞納受信料を時効援用すればいいか迷っている
こういった不安から、証明時効援用通知書を送るのをためらっている人も多いでしょう。
ですが迷っている間にNHK側から法的措置をとられては、時効にできたはずの受信料を支払わなければなりません。
その前に、消滅時効の援用を確実にしてくれる専門家にお願いしましょう。
プロに任せると、以下の全ての調査をあなたの代理で行ってくれます。
- 受信契約日
- 消滅時効期間の調査
- 承認行為の有無
- NHKから裁判所への申立があったかどうか
時効の援用の場合、書類作成代理人が可能な司法書士か、法的代理人として認められている弁護士のどちらにも依頼できます。
特に司法書士の場合、費用も安くおよそ2万~3万円。
長期間NHKの受信料を支払っていない人は、専門家に頼んで時効になっている未払い分を「消滅時効の援用」でチャラにしましょう。
【まとめ】5年以上前のNHK受信料の滞納分は時効になる!時効援用するなら中断事由に注意
5年以上ずっとNHK受信料を支払わずに滞納しているなら、5年以上前の滞納分は時効の援用をすることで支払わずに済むかもしれません。
ただしあなたがNHKからの再三のお知らせを無視し続けた結果、NHKが裁判所に支払督促の申立をすると、強制執行により強制的に受信料を回収される可能性があります。
5年以上前の受信料は時効期間が経過しているため、強制執行される前に時効の援用をして、支払い義務を放棄しましょう!
また時効を援用するなら、時効が過ぎたかどうかの確認も忘れずに。
以下のような行為があると、時効が中断されて、時効の援用ができなくなります。
- 裁判上の請求
民事訴訟による訴え
- 支払督促
NHKから裁判所へ支払督促の申立があった場合
- 和解・調停の申立
訴訟(裁判)になる前に、裁判所を通じ和解(話し合い)を申し入れる行為
- 承認行為
あなた自身が受信料の支払い義務を認めたとみなされる行為
承認行為の中には、援用通知書の記載ミスも含まれることがあるので、自分で時効を援用することが不安な人は、司法書士など専門家に相談することがベストです。
NHKから何度も「重要なお知らせ」の封筒が届いていませんか?
未払いの受信料を強制的に回収される前に、支払い義務のない受信料については早めに時効の援用をしましょう。