「お金がなくて、税金が払えない!」と支払うべき税金を滞納している方もいるでしょう。
税金が払えない理由は、人それぞれにあると思います。
- 収入が減った
- 予想外の大きい出費があった
- 他に借金があって、その返済を優先させている
- 税金を滞納してドンドン延滞金が膨らんでいる
では、このまま税金を支払わなかったら、どうなるか知っていますか?
税金を払うのは国民の義務ですから、必ず支払わなければなりません。
たとえ自己破産をしても、税金は免除にならないのです。
だからといって税金を払わないまま放っておいても、滞納額が増えるだけ。最悪の場合、財産が差し押さえられてしまいます。
そうならないために、税金の猶予制度を有効に活用しましょう。
今回は税金が払えないときの対処法をご紹介します。
滞納した税金は自己破産しても支払い義務は免除されない
日本国憲法第3章30条で、納税は国民の義務であると定められています。
義務とは、怠ると罰せられるもの。税金は納めなければ刑罰の対象になってしまいます。
そして滞納した税金は非免責債権と言われ、たとえ自己破産しても支払い義務は免除されません。
非免責債権には、税金以外にも下記のものがあります。
- 税金
- 社会保険料
- 不法行為による損害賠償
- 故意や過失により、人の命や体を害する行為に基づく損害賠償
- 夫婦間や子供の養育に関する支払い(離婚した子供に対する養育費、離婚に伴って発生した慰謝料など)
- 従業員への給料等
- 自己破産申立ての際、申請していなかった債権者からの借金
- 罰金(刑事罰・行政罰)
これらは自己破産をしても免除されない支払いですが、これらの支払いを滞納し続けるとどういった事態に陥るのでしょうか?
税金を滞納し続けるとどうなる?延滞金・時効・滞納処分(差押え)について
税金を払えずにいると、税金にも延滞金がつきます。
つまり免除にならない税金+延滞金が、日々増えていくということです。
「延滞金が膨らみすぎたから税金が払えない。でも放っておいたらいずれ時効になって、返済しなくてもよくなるのでは?」
そう考えてしまう人もいるかもしれません。
甘い!
もし時効が成立するなら、税金を納めないまま放置する人が続出してしまいますよね。
日本国憲法はそんなに甘くありません。
最悪の場合、滞納処分としてアナタの財産を強制的に差押えられます。
では、延滞金・時効・滞納処分の流れについて見ていきましょう。
税金が払えなくて納付期限を1日でも過ぎると延滞金が発生!
税金滞納にかかる延滞金については、国税通則法に延滞税として定められています。
※参照)国税通則法・第6章・第一節60条
下表は税金の滞納発生時期と、それにかかる延滞税率を表しています。
H12年1月1日~ 25年12月31日 |
H26年1月1日以降 | |
---|---|---|
納期限の翌日から 1ヶ月まで |
特例基準割合 | 特例基準割合+1% |
納期限の翌日から 1ヶ月以上経過 |
年14.6% | 特例基準割合+7.3% |
特例基準割合は税金を滞納した時期により異なります。
H21年1月1日~21年12月31日 | 4.5% |
---|---|
H22年1月1日~25年12月31日 | 4.3% |
H26年1月1日~26年12月31日 | 1.9% |
H27年1月1日~28年12月31日 | 1.8% |
H29年1月1日~29年12月31日 | 1.7% |
H30年1月1日~30年12月31日 | 1.6% |
税金の長期滞納者の中には、こうした延滞税が膨らみ、「請求されても払えない」「少しずつ払っているがなかなか完納できない」といった事情を抱えている人も多く存在します。
では、こうした請求はいつまで続くのでしょうか。
滞納している税金の時効
民法の時効には、5年・3年・2年など複数の期間がありますが、税金納付の時効は5年となっています。
時効の成立には、下の条件を満たしていることが必要です。
- 時効期間が経過した
- 時効期間進行中に、一度も請求を受けていない
- 時効期間進行中に、一度も納付していない
税金滞納中に一度でも請求を受けたり、一部を納付した時点で時効の進行はリセットされます。
ただ実際のところ、税金を滞納していて1度も「請求」をされずに放置されることありません。
つまり、上記の条件を満たすのは難しいということですね。
時効を期待して滞納し続けると、次に紹介する滞納処分を受けることになるので注意しましょう。
税金の滞納処分による請求から差押え・公売までの流れ
※出典)岡山県真庭市役所債権回収対策課
税金の納付期限を過ぎても、納めることができずにいると、早い段階で督促状が届きます。
それでも放置していると、いずれ滞納処分(財産差押え・財産の売却)として税金相当額を徴収されるという流れです。
滞納処分の方法は、国税徴収法という法律で決められています。
この法律によって、税金の滞納が確認されると次のように請求され、あなたの財産は差押え・公売による換価で徴収されるでしょう。
税金を滞納して、財産を公売にかけられた場合の流れはこちらです。
- 税金滞納
期限を一日でも経過すると、延滞税がかかる。
- 督促状による催告
納付期限から20日過ぎると、督促状が届く。
法律では、「督促状を発送した日から10日経過すると、財産を差押えなければならない」と決められている。 - 電話や文書による催告
督促状が届いても納付しない場合、電話・文書で催告される。
場合によっては自宅に訪問されることもある。
※各税務署の基準によって、差押え前に様々な措置をとっている。 - 財産調査
給料・自動車の有無・銀行口座(取引履歴)・生命保険(解約返戻金)・売掛債権
- 身辺調査
勤務先・所得調査・家族構成・戸籍調査(引っ越し履歴も調査される)
- 差押え
財産調査を元に、差し押さえるべき財産が決定され差押えが行われる。
動産等の場合、自宅等を捜索して差押えられることもある。 - 登記や通知など
不動産の差押えを受けると、差押登記がなされる。
給与の差押えの場合は勤務先・預金差押えの場合は金融機関へ差押通知書が送付される。 - 公売・取り立てによる換価
差押え後も納付されない場合、差押えられた物がインターネットや競売で売られる。
官公庁オークション - 滞納した税金へ充当
公売によって換価された金額を税の滞納分に充当される。
税金の滞納処分の実例!差押えやタイヤロックなど12月は徴収強化月間!
ここまでの説明で、現在滞納している人はとても不安になっているかもしれません。
実は、毎年12月は各地域の税務署で、滞納中の税金徴収を積極的に行っているようです。
東京都の場合、「滞納STOP月間」として、平成28年12月は1ヶ月間で以下の内容・件数の滞納処分を行いました。
- 差押え5,925件
- タイヤロック31件
- 捜索109件
※参照)東京主税局
こちらの写真はタイヤロックの様子です。
※画像引用)東京主税局
所有している不動産(自宅・土地など)や車がない人や、銀行口座に残高がない人でも、自宅を捜索され、生活必需品以外は徴収されオークション等で売られてしまいます。
納税に関しては、税負担の公平性確保と納税秩序の維持のため、悪質な滞納者に対して厳しく徴収します。
ですが、中にはやむを得ない事情で税金を納付できない人もいますよね。
次に、そういった事情があって税金が払えない人のために、ぜひ利用していただきたい制度を紹介します。
税金が払えない人はどうしたらいい?猶予制度と非課税対象者について
税金にも様々な種類があり、それぞれに納付額・時期が定められています。
消費税などは買い物した際、その都度支払っていますね。
中でも所得税・住民税・固定資産税は金額が大きく、収入状況によっては納付が困難な場合もあるでしょう。
そういった人のために利用できる2つの猶予制度があります。
また、猶予制度を利用しても納付が難しい人は、非課税対象になるかもしれません。
では、猶予制度と非課税対象について解説していきます。
税金が払えない人は徴収猶予・換価の猶予制度で分納しよう
納付金額が比較的高い「所得税・住民税・固定資産税」の特徴を下表にまとめました。
種類 | 特徴 |
---|---|
所得税 |
|
住民税 |
|
固定資産税 |
|
表を見て分かるように、住民税は昨年の収入に応じて、今年納付する額が決定されます。
つまり現在無職で収入がなかったとしても、昨年は会社で働いてお給料をもらっていたという方は、住民税を支払わなければなりません。
また固定資産税も現在の収入に関わらず支払い義務があり、家・土地の評価額で納付額が決まります。
収入や住んでいる地域によって住民税と固定資産税は異なりますが、収入が無い、または激減した人が、何万円~何十万円もする税金を一括払いや4回払で納めることはとても大変ですね。
ですが納付できなければ徴収処分の対象になってしまいます!
そういった人は、徴収処分を待ってもらい、猶予期間に分割で完納を目指す制度を利用しましょう。
徴収処分そのものを待ってもらえる徴収猶予と、すでに差し押さえられた財産の売却を待ってもらえる換価の猶予、それぞれ2つの制度を詳しく解説します。
財産の差押えを回避する方法「徴収猶予制度」
徴収猶予制度は、納税者本人や親族が、病気をしたり災害に見舞われたときに納税を猶予する制度です。
税金の徴収を最長1年間猶予してもらえ、新たな督促・差押え・換価の処分を受けません。
また徴収猶予期間中の延滞金は、全部または一部免除。
さらにすでに差押えられた財産は、申請すると差押え解除してもらえる場合があります。
徴収猶予制度を利用できる人の条件を以下に挙げました。
- 所有財産が災害被害にあった・盗難に遭った
- 病気や怪我をした(生計を共にする家族も該当する)
- 個人事業主で、事業を廃止・休止した・著しい損失を受けた
- 原則として担保の提供がある
※担保の提供は、滞納金額が100万円以下・猶予期間が3ヶ月以内であれば必要ありません。
ただし徴収猶予が認められたとしても、税金の納付を待ってくれるわけではありません。
「最長1年間は徴収されない」だけです。
申請書に申告する分納計画に沿って、猶予期間内に納めましょう。
税金滞納で財産を差し押さえられたら「換価の猶予」で売却回避
換価の猶予とは、すでに差し押さえられた財産の換価を待ってもらえる制度です。
差し押さえられると生活が困難になるおそれがある財産(家など)は、差押えが猶予(または解除)される場合があります。
換価の猶予が認められた期間中の延滞金は一部が免除になるのも、この制度の特徴です。
また、換価の猶予にも利用条件があります。
- 税金納付によって、生活の維持が困難だと認められる
- 納税について誠実な意思が認められる人
- 換価の猶予を受ける住民税以外に、滞納している住民税がないこと
- 納付期限から6ヶ月以内に申請書が提出されている
- 原則として担保の提供がある
※担保の提供は、滞納金額が100万円以下・猶予期間が3ヶ月以内であれば必要ありません。
徴収猶予・換価の猶予ともに、猶予期間は1年の範囲で、所有財産や収支状況に応じて、最も早く納付できると認められる期間に限られています。
1年以内に完納することが難しいような事情が認められた場合、猶予期間の延長ができる場合もあります。
期間延長は、当初の猶予期間と併せて最長2年までです。
また、次のような場合、猶予を取り消されることがあるので気をつけましょう。
- 分割納付計画のとおりに納付がない
- 猶予を受けている住民税以外に、新たに納付すべき住民税が滞納になった
税金を免除してもらえる非課税対象者とは?
税金は公平な税率で徴収されています。
しかし、突然の解雇・病気・災害等により、納付できない事もあります。
先程紹介した猶予制度を利用しても、税金を納めることができなければ、税金免除の対象になるかもしれません。
税金が免除される非課税対象者とは次に当てはまる人です。
- 生活保護による生活扶助を受けている
- 障害者・未成年・寡婦または寡夫で、前年度所得が125万円以下
(給与所得者の場合、204万4,000円未満)
※寡婦・寡夫とは、配偶者と離婚・死別した後、婚姻していない人で扶養親族がいる人をいいます。
このように税金が免除されるのは、一部の限られた人だけです。
非課税対象ではなく、徴収猶予制度を利用しても税金を納めることが難しければ、別の方法を考えなければなりません。
どうしても税金が払えないなら支出を見直そう
ここまでは、特に納税できない事情がある人が利用できる対処法でした。
ですが人並みに収入があるのに税金を滞納し、徴収処分を受けるかもしれない人はどうしたらいいのでしょうか。
官公庁オークションサイトを見ても分かる通り、税金の徴収方法は借金の取立てより強制力が強いのです。
最後にご紹介する方法は、支出を見直して税金を払う方法です。
アナタの毎月の支出の中で、いますぐ減らせるものがあるとしたら、さまざまな支払い(返済)のためのお金ではないでしょうか?
そのお金を減額や免除することで、納税に充てることが可能なお金が増えます!
すぐに行動すれば、今月の支払い(返済)からストップさせることも可能です。
借金返済のせいで税金が払えない人は弁護士に相談してみよう
もし、アナタが浪費家なら節約すれば滞納した税金を支払えるでしょう。
しかし、借金の返済のせいで税金が払えないなら、節約では解決できません。
実は借金による様々な問題は、弁護士・司法書士に相談すればすぐに解決します。
その解決方法を債務整理と言います。
債務整理とは、債務(借金)を減額や免除によって整理する方法です。
弁護士や司法書士に依頼し、各債権者に受任通知を送付してもらうと、すぐに返済がストップするメリットがあります。
借金の返済額が大きい人は、支出を大幅に減らすことができるため、すぐに税金を納めることができるでしょう。
債務整理には、大きく「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つの方法があります。
家族にバレずに借金を減額させる「任意整理」
任意整理は、裁判所を通さずに依頼した弁護士・司法書士が、各債権者と任意の交渉で借金を減額させてくれる方法です。
主に以下2つの交渉方法を行います。
- 利息カット
将来支払うべき利息を全てカット
- 返済回数の交渉
返済回数を36~60回払いに増やし、月の返済額を減らす
借金は免除されませんが、利息分が減額されるため毎月の支出が減り、税金を納めることができます。
さらに裁判所を通さず任意で行うため、家族に内緒でできることもメリットの1つです。
任意整理について詳しく知りたい方は「任意整理の手続きの流れと期間を解説」をご覧ください。
また任意整理を相談するなら、司法書士法人杉山事務所がオススメ。
債務専門の司法書士が対応してくれるので、安心しておまかせできます。
家や財産は残しつつ借金を減らす「個人再生」
個人再生とは裁判所手続の1つで、家や土地など財産を手放さずに借金を大幅に減額してもらうことが可能です。
個人再生の減額基準額は下の通り。
借金の額 | 減額 |
---|---|
100万円以下 | 減額なし |
100~500万円 | 100万円に減額 |
500~1,500万円 | 5分の1まで減額 |
税金は滞納額が膨らむと、財産を差押えられ競売にかけられてしまいます。
その前に、個人再生で返済に充てる支出を減らし、税金を納めることができれば、大切な家や土地、財産を残すことが可能になるでしょう。
個人再生については「個人再生の手続きの流れを解説」に詳しく紹介しています。
個人再生を相談するのにオススメの法律事務所は、ひばり法律事務所です。
東大法学部卒、25年以上の実績を誇る弁護士があなたの借金問題を解決へと導いてくれます。
滞納した税金以外の支払いをゼロにできる「自己破産」
冒頭で書いたように、自己破産しても滞納した税金を納める義務がなくなることはありません。
ですが、税金(非免責債権)以外の借金返済義務を、自己破産で免除してもらうことは可能です。
自己破産することで、少しずつでも滞納した税金を払っていけるなら、検討することも必要と言えるでしょう。
借金返済の義務は裁判所から認められるとなくなりますが、納税の義務からは逃れられません!
少しでも早く専門家に相談することをオススメします。
自己破産のことなら、弁護士事務所に相談するとスムーズに解決できるでしょう。
アース法律事務所は、24時間365日メール相談を受け付けています。
元裁判官の弁護士が在籍しているので、裁判所での手続きが必要な自己破産に強い弁護士事務所です。
自己破産の詳細を知りたい方は「自己破産の手続きの流れを解説」をご覧ください。
【まとめ】税金が払えないなら猶予制度の活用と支出の見直しをしよう
「税金を払えと言われても、ムリなものはムリ。」
そのお気持ち、お察しします。
ですが日本人として生まれてしまったからには、税金の支払い義務があります。
「家や車などの財産を売ってでも税金を払いなさい。」「自己破産しても税金は払わないとだめ。」というのが国の法律。
それならば、できるだけ大事なものを失うことなく、少しずつでも税金を払っていきませんか?
税金が払えないと困っている方は、猶予制度を一度検討してみてください。
制度の内容 | |
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徴収猶予 |
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換価の猶予 |
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これらの対象にならない方は、現在の支出を見直して税金の支払いができないか確認する必要があります。
借金返済が理由で税金が払えないなら、債務整理をして借金を解決すれば、税金が払えるかもしれません。
専門家に債務整理を依頼すると、すぐに借金の返済がストップするので、気になる方は相談するといいでしょう。